はじめに
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の副反応に関連する調査について、名古屋市で実施された調査に関する論文が2018年2月に出されていたので、紹介します。(1番今の職に近いエントリですが、個人的に知りたかったことを調べただけなので、所属先とは関係ありません。ただし、もし医療系クラスタ及び疫学クラスタの方が本論文について批判的吟味をされていたら、積極的にコメントして頂ければと思います。)個人的には、自分が子どもを産んだので、将来娘に接種すべきかどうかの判断材料にしたいという思いもありました。
論文は、以下のURLからフリーで閲覧できますので、よろしければ御覧ください。
Suzuki S, Hosono A. No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study. Papillomavirus Research. 2018;5:96-103. doi:10.1016/j.pvr.2018.02.002.
論文の概要
本論文の調査は全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会 愛知支部から名古屋市長へHPVワクチンの症状調査の依頼があり、
名古屋市立大学で実施されたものです。
本論文の対象者は1994年4月2日~2001年4月1日生まれで、2010年4月1日時点で9~15歳の女子です。匿名の調査票(アンケート)の結果をもとに調査が実施されています。調査票は2015年9月1日に郵送され、2015年11月2日までに返送されたものが対象です。
調査票は公開されているので、以下からご参照ください。
英語版:http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/kouei.dir/Questionnaire-eng.pdf
本研究で調査対象となった症状ですが、被害者連絡会愛知支部と著者らが選んだ症状であり、結構特殊な項目(報道されているような慢性的な疼痛等の症状も含まれる)でした。以下調査票で記載されている24項目を掲載します。
1
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月経不順
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Menstrual irregularity
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2
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月経量の異常
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Abnormal amounts of menstrual bleeding
|
3
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関節やからだが痛む
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Pain in the joints or other parts of the body
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4
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ひどく頭が痛い
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Severe headache
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5
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身体がだるい
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Fatigue
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6
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すぐ疲れる
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Poor endurance
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7
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集中できない
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Difficulty concentrating
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8
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視野の異常(暗くなる・狭くなるなど)
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Abnormal field of vision (darkened, narrowed, etc.)
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9
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光を異常にまぶしく感じる
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Abnormal sensitivity to light
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10
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視力が急に低下した
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Sudden vision loss
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11
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めまいがする
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Dizziness
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12
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足が冷たい
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Cold feet
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13
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なかなか眠れない
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Difficulty falling asleep
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14
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異常に長く寝てしまう
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Abnormally long duration of sleep
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15
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皮膚が荒れてきた(湿疹・イボなど)
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Skin problems (rashes, warts, etc.)
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16
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過呼吸
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Hyperventilation
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17
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物覚えが悪くなった
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Memory decline
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18
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簡単な計算ができなくなった
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Loss of ability to do simple calculations
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19
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簡単な漢字が思い出せなくなった
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Loss of ability to remember simple Kanji
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20
|
身体が自分の意志に反して動く
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Involuntary uncontrollable body movement
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21
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普通に歩けなくなった
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Loss of ability to walk in a normal way
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22
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杖や車いすが必要になった
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Becoming dependent on a walking stick or wheelchair
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23
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突然力が抜ける
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Sudden loss of strength
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24
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手や足に力が入らない
|
Weakness in the hands and feet
|
本論文では、上記24症状の1つ以上の症状とHPVワクチン接種の関連をワクチン接種者 vs 非接種者で全体比較したものを主要解析としています。
また、主要解析の他にサブグループ解析を2つ設けています。
初回に予防接種を受けた年齢により分けたサブグループ解析1と予防接種前に今回対象とした調査の症状が発現していた被験者を除外したサブグループ解析2です。サブグループ解析1では、女性の生年月日と最初の予防接種年齢でカテゴリを分けて、コホートも別に設定しています。
カテゴリとコホート区分は下記の表にまとめてみましたのでご参照ください。なお、論文中にはFig. 1に示されています。
年齢
カテゴリ
|
生年月日
|
1
|
1994年4月2日~1995年4月1日
|
2
|
1995年4月2日~1996年4月1日
|
3
|
1996年4月2日~1997年4月1日
|
4
|
1997年4月2日~1998年4月1日
|
5
|
1998年4月2日~1999年4月1日
|
6
|
1999年4月2日~2000年4月1日
|
7
|
2000年4月2日~2001年4月1日
|
コホート
|
年齢カテゴリ
|
ワクチン初回接種時期
|
1
|
カテゴリ1,2
|
2011
|
2
|
カテゴリ3,4
|
2010
|
3
|
カテゴリ4,5
|
2011
|
4
|
カテゴリ5,6
|
2012
|
5
|
カテゴリ6,7
|
2013
|
各コホートでは、年齢は2年間ごとにカテゴリを分けていて、論文の記載を参照すると、初回接種の人数が多い年を選択したようです。
また、サブグループ解析2のワクチン接種以前の症状が出ている対象者の除外方法は、Fig. 2に書かれていました。
また、サブグループ解析2のワクチン接種以前の症状が出ている対象者の除外方法は、Fig. 2に書かれていました。
統計解析では、ロジスティック回帰分析を用いて年齢調整オッズ比で出しています。なお、ワクチンは2価と4価がありますが、認可の時期の関係で2010年と2011年は2価のワクチンが87.8%、2012年と2013年は4価のワクチンが80.0%接種されています。
本調査は先に記載した調査票を用いて郵送にて調査をしていますが、71,177通の調査票に対して、届かなかった217通を除いて30,793通の調査票で回答(43.4%)が得られ、調査に必要な年齢や接種に関するデータが書かれていない947人を除いて、29,846人のアンケート結果が用いられています。
本研究の対象者の生年月日、年齢区分、ワクチン接種状況をカテゴリ別に示した表はこちらです。(論文のTable 1のリンク先となります)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5887012/table/t0005/?report=objectonly
ワクチンの接種状況の分布と24症状の発生割合についての結果は論文中の表(Table 2)の症状に日本語訳を加えたものを掲載します。(表が大きいので、下記リンク先においておきました。別窓で開いたりしてご参照ください。)
下記の表(Table 3)は主要解析における各症状の接種群と非接種群のオッズ比(年齢調整後)です。和訳のみ追加しています。
有意なオッズ比は太文字で示しています。(こちらも表が大きいので、下記リンク先においておきました。別窓で開いたりしてご参照ください。)
これをみると、有意なオッズ比は病院を受診した場合の"月経不順":1.29(95%信頼区間:1.12–1.49)、"月経量の異常":1.43 (1.13–1.82)、"ひどく頭が痛い":1.19(1.02-1.39)また継続する症状については"月経量の異常"1.41(1.11-1.79)のみです。
また、先に示したサブグループ解析1のコホート別の結果も掲載されていました。なお、コホートの特性の違いについては、下記の表 (Table 4)を引用します。(このサブグループ解析を実施することで患者背景を揃えて比較する目的があったと考えられます。)
Table 4
Characteristics of the five age and immunization year cohorts for subgroup analysis.
Birth period
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Cohort 1
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Cohort 2
|
Cohort 3
|
Cohort 4
|
Cohort 5
|
April 2, 1994-April 1, 1996
|
April 2, 1996-April 1, 1998
|
April 2, 1997-April 1, 1999
|
April 2, 1998-April 1, 2000
|
April 2, 1999-April 1, 2001
| |
Maximum difference of birth date within the cohort
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2 years
|
2 years
|
2 years
|
2 years
|
2 years
|
First injection (for vaccinated girls only)
|
2011
|
2010
|
2011
|
2012
|
2013
|
Age at the year of first injection
|
14–17 years old
|
11–14 years old
|
11–14 years old
|
11–14 years old
|
11–14 years old
|
Number of vaccinated girls
|
4973
|
3296
|
2800
|
2605
|
1002
|
Number of unvaccinated girls
|
0924
|
1115
|
1923
|
3298
|
5799
|
Total number
|
5897
|
4411
|
4723
|
5903
|
6801
|
Vaccination coverage (%)
|
84.3%
|
74.7%
|
59.3%
|
44.1%
|
14.7%
|
Comparison of age at first injection
|
√
|
√
| |||
Comparison of year of first injection
|
√
|
√
|
√
|
√
|
コホートごとの各症状の接種群と非接種群のオッズ比(年齢調整後)はこちらです(論文中の Table 5に和訳を追加したもの)
コホート4の"突然力が抜ける":1.67(1.03-2.73)コホート5の"物覚えが悪くなった":2.17(1.43-3.30)のみが有意に大きいオッズ比となっています。こちらの表について、論文中では、両症状の関連がないと述べられています。また、ワクチン接種の時期が遅くなるほど1より大きいオッズ比が多くなることについては、最初の接種率が高い頃(第4カテゴリまでは85%以上の高い接種率ですが、第5カテゴリで71.5%、第6カテゴリで51.0%、第7カテゴリで15.0%まで減少しています(参照 Table 1))、ワクチン非接種群の健康状態がそもそも悪い可能性(病者選択バイアス)があること、またワクチン接種に関する否定的意見に対する心理的影響を示唆すると述べられています。
また、サブグループ解析2(今回対象とした調査の症状が予防接種前に発現していた被験者を除外したもの)の結果も以下に掲載されていました。(論文中のTable 6に和訳を追加したもの)
病院を受診した場合のオッズ比が主解析(Table 3)より大きくなっていることが分かります。このオッズ比の大きさについては、Discussionにおいて、理由A:医師の診断や治療が必要であった、理由B:副反応が心配であることが理由で受診した、理由C:ワクチン接種の印象が強かったので症状が無意識にワクチン接種後になったがあると論じてられています。また、オッズ比が大きい6.15(簡単な漢字が思い出せなくなった)と4.95(簡単な計算ができなくなった)はワクチン非接種群が2例のみのため、ロバストな結果ではないと述べています。また病院の受診で大きいオッズ比をしめしていても、継続する症状では大きくなっていないことも書かれていました。
これらの結果を踏まえて論文中では、HPVワクチンは24の報告された症状の発現と有意に関連せず、ワクチンと報告された症状または有害事象との因果関係はないとまとめています。
私の視点
論文の記載からいうと、報道されていたような慢性的な疼痛等の症状は、ワクチン接種とは関係ないという論調で、読む限りはそうだろうなという印象です。
公平にデータを見るならば除外条件を適用させたサブグループ解析2を主解析としたほうが適切なようにも思い、病院受診(調査票上で"病院を受診した"の区分を選択した場合の結果)の場合のオッズ比が大きいこともやや気になります。反対派の人たちが、Discussionでの理由の考察が恣意的ではないかと書いている点については、私も少し因果関係が分からないことに対して、副作用なしという結論ありきで調査したのではないかと捉えられるくらいには、恣意的かなという印象はうけます。
しかしDiscussionにもう一つ書かれていた、病院受診のオッズ比が大きいものについては、継続する症状でも大きくない場合、”病院の受診が症状の重症度によって引き起こされたのではなく、アンケートの回答に対する医学的アドバイスやワクチン接種の効果を求める態度が変化したことを示唆”、という点には同意です(病院の受診が必要であっても継続して症状が出ていなければ一時的なものだと思われるため)。
そうした点から考えると、もっとも注目すべきものをサブグループ解析2の継続する症状とみると、オッズ比が大きいものが月経不順(1.18)と月経量の異常(1.54)となります。これらの症状は、報道されていた症状とは無関係であり、またこの程度のオッズ比について、薬害である断定できるほどではないかなと思います。(←オッズ比の具体的な数値と薬害については、他の疫学的研究の副作用の論文から得た私の感覚的なものなので、良い資料をご存知の方がいたら教えてください)
また、反対派の方々が述べている年齢調整オッズ比については、ワクチンの疫学研究で普通に用いられているようですが(インフルエンザの研究でも記載を見つけました(例:Riley, Steven, et al. "Epidemiological characteristics of 2009 (H1N1) pandemic influenza based on paired sera from a longitudinal community cohort study." PLoS medicine 8.6 (2011): e1000442.)お年寄りと若い人のような例ではなく、今回のような低年齢の場合の使用方法はどうするのが適切なのか、ということをご存知の方がいたら教えてください。今の所、ロジスティック回帰を用いて年齢の調整しているとはいえ、粗データでの副反応割合が接種群と非接種群でかなり近いので、反対派の方々が息を荒くして、妥当性がないと言い張る程ではないかなと感じています。
他の研究や現状も踏まえどう行動するか
さて、振り出しに戻ります。今回調べてみた理由の1つは、自分の娘が生まれたので将来HPVワクチンの予防接種を受けさせるかどうか判断材料としたいという点でした。この結果を読む限りではベネフィットのほうが大きいので受けさせるかなと思います。
なぜなら今回の論文で示されたワクチンの副反応の割合に対して、子宮頸がんになる割合の方が高いと思われるからです。今回の調査では、オッズ比を見ても継続的に重篤な症状があるのかという観点からみると薬害といえるほどの症状は無く、他方で子宮頸がんは一生のうち1%以上(一生のうちにおよそ74人にひとり)の方が診断されており、(参照:子宮頸がんとは?|知っておきたいがん検診 - 日本医師会)ワクチンはこれを半数程度は抑えられるからです(参照:子宮頸がん予防ワクチンQ&A|厚生労働省)
また、HPVワクチン接種歴のない青少年においても、「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」を有する者が一定数存在することが分かってきています。(参照:厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)総括研究報告書ー子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究)(なお、本研究ではワクチン接種と非接種の有訴率も比較していますが、母集団が異なるので単純比較は出来ないようです。引き続き全国疫学調査も行われているようなので次は明確な結果が出るかもしれません。)
子宮頸がんワクチンの問題について最初聞いたとき、時間軸があり、犠牲者が異なる問題をどう捉えるのか悩ましいと思っていたのですが、以上の状況を踏まえると接種の妥当性の方が高いかなと思います。
と理性では分かっているのですが、報道の力というのは本当に大きくて、あの立てなくなってしまったであるとか漢字が書けなくなってしまった少女の映像が脳裏をよぎり、一度ネガティブな印象がついてしまったものについては、それを払拭することが簡単なことではないと身をもって感じている次第です。これが子を持つ親の心なんだろうなぁと。
また、マスで見た場合と個別の案件は区別して考えなければならないという視点もあります。
また、マスで見た場合と個別の案件は区別して考えなければならないという視点もあります。
最近の医療関連のニュースについて思うこと
日本の報道をみていると、エビデンスが不足している報道が多すぎるなと思います。"教科書に書いてあることを信じない"という本庶先生の言葉もあり、論文に書かれていることすら全てを信じられないという世界ではありますが(実際今回の論文も本当のところは自分で手を動かさないと理解できないとは思っています)、せめて一次ソース(論文の出処)を示すだけでもずいぶん違うと思います。
ソースが無いものは特に、誰がどんな意図で発言したかを精査する必要があります。医療従事者が書いている場合でも、医療従事者はその資格を取るためのステップを経たというだけで(それは確かに尊重されるべき過去の事実ですが)その発言の妥当性は別途判断が必要です。
また論文がある場合にも、論文にもランクがありますから、信頼度が高い論文誌、通すのが難しい論文誌を鑑みて、医療関係者で論文誌をランク付けして、掲載論文誌の信用度の星マークでも五つ星でつけてあげれば、医療関係の報道や記事の信頼性がずいぶん変わるはずです(この医療関係者を誰にするかという問題は別途ありますが)。星の数が変動するならば、定期的にアップデートして、コードを貼り付ければ自動的に星の数が変わるようにしてしまえば良いでしょう。
ソースが無いものは特に、誰がどんな意図で発言したかを精査する必要があります。医療従事者が書いている場合でも、医療従事者はその資格を取るためのステップを経たというだけで(それは確かに尊重されるべき過去の事実ですが)その発言の妥当性は別途判断が必要です。
また論文がある場合にも、論文にもランクがありますから、信頼度が高い論文誌、通すのが難しい論文誌を鑑みて、医療関係者で論文誌をランク付けして、掲載論文誌の信用度の星マークでも五つ星でつけてあげれば、医療関係の報道や記事の信頼性がずいぶん変わるはずです(この医療関係者を誰にするかという問題は別途ありますが)。星の数が変動するならば、定期的にアップデートして、コードを貼り付ければ自動的に星の数が変わるようにしてしまえば良いでしょう。
上記も私のただの思いつきですが、役に立ちそうな記載が含まれていれば幸いです。コメント等ありましたら、ブログ下に直接ご記載頂くか、宣伝元のSNSの投稿にコメントください。